第一章 夢の終わり

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私はどうして雨に打たれながら脚を泥だらけにして、何処だかわからない山道を走る羽目になったんだろうか? 後からはどうみてもビッグライ〇で大きくしたとしか思えない人間二人分サイズの野良犬?が群れで私を追いかけ回して来る。 雨を含んでずしりと重たくなった制服が、靴下が私の動きを鈍らせた。 意味が解らないが、取り敢えず逃げるしか無い。 飛び掛かる大野良犬を避けるだけでは間に合わない。 現状が非常時なだけに体力を温存したいところだが、そんな余裕がある筈もなく。 適当に拾い上げた細い割にはやけに重い木の枝を振るって、ランダムに襲い掛かる大野良犬の鼻先や眼を打ち払ってなんとか防御を試みていた。 自分自身驚く程の持久力と身のこなし。 趣味のジョギングがこんなところで役に立つとは。 毎夜兄に叩き込まれた剣舞が、こんなに形で活きるとは思いもしなかった。 何事もやってみる、続けてみるものである。 どのようなタイミングで、どのようなスキルが役立つのかなんて、その時が来るまでは苦痛でしかないが。 それは突然希望の光りへと変わり、窮地に活路を与える蜘蛛の糸になることを身を持って知った。
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