第一章 夢の終わり

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だが、この追撃者達は容赦がなかった。 大野良犬は連携する。 二匹が正面から、牙を剥き出して私の喉を狙い、次の一匹は正面の二匹を飛び越え、前脚の爪で頭から引き裂こうとする。 また、ランダムに四匹めがふくらはぎを襲うので、その度に、屈んだり、跳んだりと、かなりの運動量に流石の持久力も底がみえてきた。 ――せめて言葉が通じれば。通じるわけないけど。 現状に現実味がなさ過ぎて、やけに思考は冷静だ。 雨でぬかるんだ野性の大地は足元が悪いために、ジメジメと嫌な冷たさを爪先に容赦無くぶつけて来る。 スカートは泥が跳ねて新しい柄が出来た。 セーラーは雨と汗でじっとりと身体に張り付いて気持ちが悪い。 スカーフは大野良犬の返り血、もとい返り涎でべとべとだ。 怖い。 寒い。 汚い。 あまりに酷い状態に泣けてくるのは、腐っても女の子ということなのだろうか? また一頭、殴りつける。 稼げた時間は5秒程。 ふらつきながらも直ぐに追って来る。 当たりの弱い木の細枝では単なる時間稼ぎだが、何しろ襲撃を避けるだけが精一杯なのだ。 どうしようもない。 「わたしが何したっていうのよ!!」
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