344人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、この追撃者達は容赦がなかった。
大野良犬は連携する。
二匹が正面から、牙を剥き出して私の喉を狙い、次の一匹は正面の二匹を飛び越え、前脚の爪で頭から引き裂こうとする。
また、ランダムに四匹めがふくらはぎを襲うので、その度に、屈んだり、跳んだりと、かなりの運動量に流石の持久力も底がみえてきた。
――せめて言葉が通じれば。通じるわけないけど。
現状に現実味がなさ過ぎて、やけに思考は冷静だ。
雨でぬかるんだ野性の大地は足元が悪いために、ジメジメと嫌な冷たさを爪先に容赦無くぶつけて来る。
スカートは泥が跳ねて新しい柄が出来た。
セーラーは雨と汗でじっとりと身体に張り付いて気持ちが悪い。
スカーフは大野良犬の返り血、もとい返り涎でべとべとだ。
怖い。
寒い。
汚い。
あまりに酷い状態に泣けてくるのは、腐っても女の子ということなのだろうか?
また一頭、殴りつける。
稼げた時間は5秒程。
ふらつきながらも直ぐに追って来る。
当たりの弱い木の細枝では単なる時間稼ぎだが、何しろ襲撃を避けるだけが精一杯なのだ。
どうしようもない。
「わたしが何したっていうのよ!!」
最初のコメントを投稿しよう!