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感情の振り幅は、大きければ大きい程、すぐに入れ代わってしまうらしい。
怒りが恐怖心に勝った。
正確には、スタミナの限界に逃げる力が残っていないため、腹が据わった、というべきか。
――窮鼠猫を噛むってもんよ。
私は反転して、飛び掛かる一匹の大野良犬の右眼を狙って突進した。
捨て身の一撃。
全身全霊の攻撃だからこそ、視野が狭くなる。
左側から一匹の大野良犬が突進する姿を捉えたときには、もう手遅れだった。
左半身を頭突きされる。
「ぐぁッ!!?」
不意を付かれた私は思い切り弾き飛ばされる。
地面に叩き付けられ、転がりながら泥の水溜まりにノーガードで突っ込んだ。
衝撃が大き過ぎて息が出来ない。
泥水が鼻と口から侵入してくる。
反動でむせ返ると、身体の痛みが全身を駆け抜け、痺れたように全く動かない。
激痛に眩暈を覚えたのは初めてだった。
瞼が重く、今にも閉じてしまいそうな瞳に、ゆっくりと近付く大野良犬達の姿が映る。
――こんな最期はありえないよ――
意識を手放した刹那、大野良犬達とは違う獣の咆哮と、何か金属がぶつかるような固い音が、耳に届いた気がした。
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