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「いやぁっ!」
私は跳び起きた。
カーテンから薄明かりが零れる。
雀が鳴いている。
もう冬なのに、寝汗でバジャマとシーツがぐっしょりだ。長い髪がベタついて、二倍気持ちが悪い。
この小さな女の子が、男の子と一緒に逃げて、女の人と別れる夢を、もう何回見たのだろうか。
私はベッドからゆっくり降りると、面倒臭そうに制服に着替えた。
『あれ?今、起きたんだからジョギングでしょ。なんでジャージじゃないの?』
気がつくと、目の前に兄が立っていた。
兄は私の手を取ると、ベッドに私を座らせて、自分はフローリングに、私と向かい合うように座った。
背の高い兄を見下ろすのはなんだか気恥ずかしい。
ふと逸らした視線の先で、天窓から満月が見えた。
『イヤ、おかしいでしょ。時間軸すっ飛ばし過ぎでしょ』
兄の綺麗な顔が、悲しそうに歪んでいる。
「時が満ちました。私達はもとの世界に帰らなければいけません」
「帰るって?いきなりなんの話?」
私は意味わからないという顔をしている私自身にツッコミを入れた。
『それもそうだけど、この展開おかしいでしょ。昼はどこ行ったの!』
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