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『どこかで聞いたセリフだ。どこだっけ?』
兄の言葉に安堵した私はふと、気になったことを口にする。
「……なんで、皆無くなって真っ暗なのに、お兄ちゃんと私は見えてるの?」
天窓の満月もランプも気がついたら消えていた。
乗っていたラグも消えている。
消えていく感触さえ感じることが出来なかった。
「胡蝶様がお守り下さっているからです」
『そう!誰その人?』
守ってくれている人物について尋ねようとした瞬間、暗闇の中で小さな赤い光りが遠くに見える。
「今、あ……!!」
赤い光りが、と言い終わらないうちに、光りは私達に向かって来た。
近付くにつれて、光りのサイズが大玉転がしのボール並であること、二人を中心に挟んで八方から八つの光りが向かって飛んで来る様が判る。
兄はジーンズのポケットから、切符サイズの断面の綺麗な黒い石を取り出すと、私にしっかりと握らせた。
「誘引石です。決して離さないでください」
背後に光りが迫る。
八つの光りが集まる瞬間、兄が私の両肩をしっかりと掴み、下に押した。
すると今まで平らな地面の上にいるかのように浮いていたのに、何故か私だけが急に落下したのだ。
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