第一章 夢の終わり

8/35
前へ
/461ページ
次へ
落下する風圧に堪えながら目をこじ開ける。 ――どうして?お兄ちゃん!? 驚いて上を見上げると、八つの光りが兄を飲み込み、大きく発光したかと思うと、一瞬で消え失せた。 「嘘っ!!?」 独りになって、改めて恐怖心が広がっていくのを感じる。 身に纏うはただ制服のみ。 救命装置のかけらもないのだ。 暗闇の中には、縋り付ける対象物も存在しないのだから。 私は何にぶつかって命を落とすことになるのだろうか? 底が見えないなんて、余計に怖い。 思わず握り締めた震える掌の中にある異物が、兄の言葉を蘇らせる。 ――私にはもうこの石しかない―― 石を握りながら祈るように胸に抱けば。 刹那、暗闇の底に小さな緑の光りが見えた。 「!?……もしかして私も、お兄ちゃんみたいにアレに捕まって消えちゃうのッ!?」 『その通り!』 緑の光りが輝く。 それはとても大きな円を形作っていた。 緑の光りの眩しさに堪えながら、何故か懐かしさを感じてしまう。 『この光りもどこかで…』 光りの円を潜る瞬間、私は兄のところへ行けるように祈った。 弾けた閃光に固く目を閉じる。
/461ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加