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落下する風圧に堪えながら目をこじ開ける。
――どうして?お兄ちゃん!?
驚いて上を見上げると、八つの光りが兄を飲み込み、大きく発光したかと思うと、一瞬で消え失せた。
「嘘っ!!?」
独りになって、改めて恐怖心が広がっていくのを感じる。
身に纏うはただ制服のみ。
救命装置のかけらもないのだ。
暗闇の中には、縋り付ける対象物も存在しないのだから。
私は何にぶつかって命を落とすことになるのだろうか?
底が見えないなんて、余計に怖い。
思わず握り締めた震える掌の中にある異物が、兄の言葉を蘇らせる。
――私にはもうこの石しかない――
石を握りながら祈るように胸に抱けば。
刹那、暗闇の底に小さな緑の光りが見えた。
「!?……もしかして私も、お兄ちゃんみたいにアレに捕まって消えちゃうのッ!?」
『その通り!』
緑の光りが輝く。
それはとても大きな円を形作っていた。
緑の光りの眩しさに堪えながら、何故か懐かしさを感じてしまう。
『この光りもどこかで…』
光りの円を潜る瞬間、私は兄のところへ行けるように祈った。
弾けた閃光に固く目を閉じる。
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