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中庭を抜けた少年は、建物の影に身を潜ませながら、慎重に進んで行く。
「…ハア……ハア…………ハア…」
夜風に乗って、色々な音が入り混じる。
鍔ぜり合う甲冑の反響。
熱風に押し崩される外壁。
そう、周囲は火に取り囲まれていたのだ。
「ハア………ハア………ハア………ッ!!」
焦げ付いた空気に少年は身構える。
肌を刺すように熱いのに、背を流れ落ちる冷や汗はまるで氷のようだ。
少年は振り返ることが出来ないほどに緊張していた。
-ー追い付かれるわけにはいかない!!
少年は奥歯を噛み締め、一気に炎の森を駆け抜ける。
大きな紫色の門が見えた。
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