一章

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『一!はっ!…二っ!はっ!…三!はっ!』  今日も窓の外から新騎士達の基礎訓練の掛け声が聞こえる。 「で、あるからしてこの…」  そして、今日も口うるさく堅苦しい勉強を説いてる声が正面から聞こえてくる。 「先生、そこは昨日もしたし復習ならばすでにしたから早く先に進めてくださりません?」  溜め息混じりの指摘も毎度の事になると注意を引きつける為にわざと、やらされているんじゃないかと疑わしくなる。 (城の中の毎日なんて仲良く過ごせる相手もあんまりいなくて張り合いが無いなぁ。…早く、『あの日』にならないかな~)  そんな事を考えながら少しよそ見をしていると 「姫、そんな顔をしてもまだまだ『お散歩日和』は来ませんからきちんと勉強してください」  側に控えていた侍女にそう注意された。  そして、注意された姫ことセンセーリア・モーノス・アルバストはそちらを振り返りながら小さく舌を出した。 「あれ、バレちゃった?」 「姫の考えてる事なら雰囲気でだいたい分かりますよ」  城の中での数少ない友人、セシリアとそんな他愛も無い会話をしているとわざとらしく先生が咳払いをした。 「では、進んでもよろしいですかな?」 「はい、お願いします」 (はぁ、遊びたい)  心の中では落ち込みながら今日の勉強の国交問題に勤しむしかない姫であった。
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