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ふわふわな僕の手を触るご主人様。ニコニコしながら僕を撫で回す。
「にくきゅう、やわらかいな~。いいないいな!レンにはこんなやわらかいてがあって!」
ご主人様の名前は椎名翠(しいな みどり)様。まだ四歳の女の子。
僕と翠様は公園で遊んでいたんだ。
翠様のお母さんはどうやら他のお母さん方とお話し中。
「ニャア!?」
声をあげてしまった。翠様に抱っこされたのだ。
翠様はジーとこちらをみてくる。そして顔が近づいて来た。
えっ!?何するの!?
僕は無意識に顔を遠ざけた。けども抱かれてるため、とうとう顔は後ろにいかなくなった。僕は目を閉じた。
ちゅ。小さい音だが僕の耳に聞こえた。あれ?これって……。
「レンがわたしのはじめてのキスのあいてだね!」
「…………」
一瞬だった。翠様にキスをされたのだ。優しいキスだった。僕は恥ずかしくなって、翠様の手から擦り抜け、走った。
「……レン?あぶないよそっちは!!」
またそれも一瞬だったんだろう。
僕は車に引かれたんだ。
目なんか開かなかった。役立つ耳で周りの声を聞き取るだけ。
翠様の泣き声が聞こえる。ああ、これ以上悲しまないで――。
僕はだんだんと、自分が死に向かって逝くことがわかった。
伝えたかった。
貴女に僕の気持ちを――。
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