2、校舎

2/11
前へ
/45ページ
次へ
 一年A組、浅井(あさい)香澄。  一年H組、山口(やまぐち)大輝。  何も知らない人たちはきっと、教室が遠く離れた私たちには何の接点もないと思うだろう。実際、同じ学年でも教室がある階が違うから、校内ではめったに出会わないし、会ったとしても会話は交わさない。  だから私たちが登下校を一緒に、しかも自転車に相乗りしているなんてことは、想像がつかないに違いない。  最後の駅を降りたあとの私たちこそが、本来の私たちであることを、みんな知らない。知るはずがない。電車でも二時間かかってしまうような田舎に来る高校生なんていないだろうから。  おしゃれな店なんてない、小学校や中学校すらない過疎中の過疎の土地にわざわざ来たがる人なんて。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加