1、電車

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 終点です。機械的な合図とともに、私たちは電車を降りた。 「じゃあね、カスミ」 「うん。また明日」  この駅から家に帰る麻衣(まい)に手を振って、今降りたのとは反対のプラットホームに向かう。  たいていの高校生はこの駅で電車通学を終えるため、もう一度電車に乗る人は少ない。これから来るのは田舎へ向かうワンマン電車だ。私の他にそれを待っている人は、隣の高校の制服を着た女子と、同じ高校の三年生と、それから。  四番ホームと書かれた柱に寄りかかって、まだ電車の来ない線路の先を見つめているシャツ姿の男子。私の足音に気がついたのだろう。彼は私の方をふり返って、ひかえめに右手をあげた。
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