1、電車

3/9
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「大輝(だいき)」  私は迷いなく、その男子の元へ駆けよる。 「部活は?」 「早く終わったんだよ」 「めずらしいね」 「そういう香澄(かすみ)こそ、いつもより一本早いだろ」 「今日の部活は休みなの」 「ふーん」  大輝は興味なさそうに、私から視線をはずした。 「また今日もお前と一緒かよ」 「……好きで一緒にいるわけじゃないんだけど」 「まあな」  本当にそうだよ、とむっとして返した言葉は、電車の走る音にかき消された。 「だけど、これに乗らないと帰れねえし?」 「うん。知ってる」  私は大輝を置いて、一両しかない電車に乗りこむ。大輝は黙って、私の後に続いた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!