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「別に」
私はそう答えて、肩をすくめる。
「もう夏だなあって、思って」
「俺関係ないじゃん」
「うん。でも……夏は、暑いよ」
「誰かさんのせいで?」
「さあ? でも今日は外が明るいね」
「夏だからだろ」
「時間も早いし」
「……じゃあ、一人で帰るか?」
「うん。そうしようかな」
私が黙ると、大輝も口を閉じた。ついでにまぶたも。
そっけない幼なじみに、いらだちに似た感情を抱きながら、私はまた窓の外に目を向ける。
――この明るさなら……。
しばらくして、沈黙をかかえた電車は止まった。降りる駅だ。
真っ先に大輝が席を立った。さっさと電車を降りていく。
ここで降りないと家に帰れないから、私は大輝のあとに続いた。
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