1、電車

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「香澄」  道を少し行った先で、自転車をとめて待ってくれている、大輝の姿が。 「早く来いよ」  そう。こんなふうに。  どんなに気まずくなっても、電車を降りた後の大輝は、いつもの大輝だった。 「遅い。もっと早く歩けって」 「……わかってる!」  だから私も、いつもの私に戻れる。高校生になる前の、素直な私に。  私はスカートが風でひるがえるのにもかまわず、大輝の待つところへ駆けた。  そうして、自転車にまたがる大輝の後ろに飛び乗る。
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