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「香澄」
道を少し行った先で、自転車をとめて待ってくれている、大輝の姿が。
「早く来いよ」
そう。こんなふうに。
どんなに気まずくなっても、電車を降りた後の大輝は、いつもの大輝だった。
「遅い。もっと早く歩けって」
「……わかってる!」
だから私も、いつもの私に戻れる。高校生になる前の、素直な私に。
私はスカートが風でひるがえるのにもかまわず、大輝の待つところへ駆けた。
そうして、自転車にまたがる大輝の後ろに飛び乗る。
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