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「ばーか、遅いんだよ」
「先に帰っちゃったのかと思った」
「お前の言うとおりに? 馬鹿か」
大輝は地を蹴った。
「お前を置き去りにすると、かーちゃんに怒られんだよ。どっかの誰かさんが泣いて帰ってくるからな」
「私は泣いたことないし」
「ああ、そうですか。そうですか」
「信じてないでしょ?」
「さあな」
大輝と私を乗せた自転車は、田舎道を走る。石が転がったところを通ると、自転車はがたがた揺れた。
「ちょっと大輝、安全運転だってば」
「こんな田舎で事故が起こるかっての。しっかりつかまってろよー」
「もう!」
しかたなく、大輝の肩にしがみつく。
鍛えられた大輝の背中はとても広かった。私がしがみついたくらいではびくともしない。
――いつの間に、こんなにたくましくなっちゃったんだろう。
大輝の背中を見ながら、私はすこし、さみしさをおぼえた。
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