1、電車

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「ばーか、遅いんだよ」 「先に帰っちゃったのかと思った」 「お前の言うとおりに? 馬鹿か」  大輝は地を蹴った。 「お前を置き去りにすると、かーちゃんに怒られんだよ。どっかの誰かさんが泣いて帰ってくるからな」 「私は泣いたことないし」 「ああ、そうですか。そうですか」 「信じてないでしょ?」 「さあな」  大輝と私を乗せた自転車は、田舎道を走る。石が転がったところを通ると、自転車はがたがた揺れた。 「ちょっと大輝、安全運転だってば」 「こんな田舎で事故が起こるかっての。しっかりつかまってろよー」 「もう!」  しかたなく、大輝の肩にしがみつく。  鍛えられた大輝の背中はとても広かった。私がしがみついたくらいではびくともしない。  ――いつの間に、こんなにたくましくなっちゃったんだろう。  大輝の背中を見ながら、私はすこし、さみしさをおぼえた。
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