1.朝

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「ふぁ、疲れたねー。」 「お疲れさまです、会長。」 桜が散る季節。 入学式を無事終え、生徒会の会長 ―― 鳳麗夜(オオトリレイヤ)―― と、副会長 ―― 春日咲(カスガサキ) ―― の姿が生徒会室にあった。 「にしてもまだ女生徒の入学が少し多いですね。」 そう、此処『県立東高校』は、制服が可愛いと言われ、受験会場も女子がほとんどだったのだ。 それでもやはり男子もいるわけで、比率で表せば、3/5が女子の割合である。 「けどさぁ、代表で出てきた一年。男やったなぁ。」 麗夜の関西弁に咲は手元にあった資料をパラパラとめくり、その名を読んだ。 「ああ、あの方ですか。確かに名前だけだと女性のような名前でしたね。」 「…萩元阿曇(ハギモトアズミ)…。」 咲は資料から目を離し、麗夜を見た。 「覚えていたんですか。」 それに麗夜は笑って応える。 「当たり前やないか。 野郎は野郎でも、えらい別嬪さんやったやないか。 そりゃ名前も覚えるで。」 「そうですね。会長は興味のある方の名前は一回で覚えてしまいますもんね。」 「何や、咲。いつもよりえらい冷めた言い方やったな、今。」 「……そんなことはないですよ。」 「何やの、さっきの間は。 ……まぁ、ええわ。 あの入学式。見物やったなぁ。 代表の名前聞いてどんな美少女が出るかと思うたら、美少年やったからなぁ。 ありゃモテるで。 ま、俺ほどやないと思うけど。」 そして麗夜は立ち上がり、苛めっ子の様な笑みを浮かべながら、 「咲。アイツを生徒会のメンバーにはできへんか?」 「また貴方はそんな無茶を…。」 ニュアンスは呆れた風だが、咲の表情も少し楽しそうだ。 「まぁ、権利は使ってなんぼやし、この俺にできへんかったことなんて記憶にないで。」 「それはただ貴方が、都合の悪いことを記憶から消してるだけじゃないんですか?」 「……咲。それ酷い…」 麗夜は泣き真似をしたが、咲はそれを無視した。 それはそれは、いつもの風景。
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