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「きゃ~。凄い弓道着似合ってるぅ。かっこよすぎぃ。」
「麗夜サマとのツーショット、なんて……あっ、鼻血が……。」
周りの女子達の声を受けながら登場したのは入学式から噂で持ちきりの阿曇である。
『なんで……。』
なんで此処に来たのだろう。
それを阿曇は心中で呟く。
『もっと良い所に行けたんだ。
なのに俺はなぜ此処に来た?』
何かに導かれるように高校のパンフレットを取り、体験入学にも参加した。
「よー似合っとるやん。」
その声で阿曇はきっちりと笑顔な麗夜を視界に入れる。
「…どうも。」
「なんや無愛想やなぁ。そんなんじゃ女に嫌われてまうで?」
「生憎女には興味ありませんし、十分モテているので。」
阿曇は丁寧語ながらも強く言い放つ。
目線も鋭い。
「何や、自慢かいな。」
ククッと喉で笑い続ける。
「まぁ、なんや。あんまり無愛想やと付き合うてもすぐ冷められるっちゅーこっちゃ。」
「実体験ですか?」
「アホ。俺様を誰や思うとんねん。鳳麗夜やで。
そげな女つくるかいな。」
「会長。」
と、ここで咲が麗夜を呼ぶ。
「あ、あーすまんすまん。つい熱くなってしもうたな。」
そう言いながら顔を綻ばせ、阿曇を真っ直ぐ見、口を開く。
「じゃあ阿曇くんのお手並み拝見といきましょうか。」
阿曇はしばし弓の引き方などを男性部員に教えてもらっていた。
その光景を、壁に背を預け腕を組んだ格好で麗夜は見つめていた。
その隣には当たり前のように咲がいる。
「何でアイツ此処に来たんや?」
「此処っていうのは、この高校ということですか?それとも、この弓道部に?」
咲がすかさず訊き返す。
「まぁどっちもやな。
アイツ、入試ナンバーワンやて?」
「ええ。苦手な英語が低かったらしいですが…。」
「ま、せやかてよろしい点数なんやろな。」
「まぁ、それは…。」
「もっとレベルが上の高校行ったら良かったんちゃうか?」
咲を見て麗夜は言った。
視線を感じてか、咲もまた麗夜を見た。
「私が知るわけないでしょう。彼に訊いてください。」
はっきりと言い放つ。
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