4846人が本棚に入れています
本棚に追加
/600ページ
「一番手っ取り早いのはドリームに所属している者に尋問する事だが……なにしろ情報が全く無い。
そして唯一の救いと言うべきか……ガードの団員が以前上井に襲われた際に、ドリームに所属しているような事を口走ったらしい。
そこで鞍馬、お前の出番だ」
そこまで言うと桜井さんはポケットから袋に入った銀の指輪を取り出し、先輩に手渡した。
あれはたしか……上井が身につけていた指輪だ。
先輩はそれを受けとると右手に握り、目を閉じた。
数秒後、桜井さんが問いかける。
「信用できる部下に直接触れないように指示して回収させてきたから、最後に触ったのは上井だ。
それから誰も触っていないはずだ。
……《コンタクト》で追跡できるか?」
「……えぇ、もちろんです。
大体の位置は把握できます」
あぁ、やはり追跡に関しては頼りになる。
鞍馬先輩の能力
『本人、もしくは最後にその物体に直接触れた人物の位置を把握する』
今回の場合だとこうなる。
あの指輪に直接触れた最後の人物は上井。
よって先輩には現在の上井の正確な位置情報がリアルタイムで脳内に送られてきている。
「よし……それなら今日のところは休め。
霧谷も今日は疲労しているようだし、お前も準備がいるだろう?」
「……そうですね。
たしか上井の能力についての情報はある程度入ってきていたとは思いますが、まだそいつの第二の能力についての情報は全くありませんからね」
たしかに先輩の言う通りだ。
あいつは自分はイレギュラーだと言った。
それは嘘ではないだろう。
だとすれば《ロックアート》以外の第二の能力をまだ所有している事になる。
それに、と鞍馬先輩は続ける。
「霧谷は実際に本人と戦ったとはいえ、まだ新人。
万全の状態で確保に向かった方がいいと思いますから」
そうだな、と桜井さんは頷く。
「ではお前たちは明日の朝に合流後、直接上井の確保に向かってくれ。
もしヤツが単独で行動していたなら、確保。
他の仲間と一緒ならば、無理に捕らえる必要は無い。
現在地を連絡して、退却しろ。
……いけるか?」
今の俺には、少々荷が重い任務かもしれない。
「……はい」
でも、やるしかない。
先輩もついている。
信用されて任されたんだ。
ガードに入った理由は、ただの憧れなのかもしれない。
それでも、自分で入ると決めたんだから。
最初のコメントを投稿しよう!