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赤瀬ドームの近くの駐車場に車を止め、そこから歩く。
俺と先輩は今日はガードの制服ではないため、周囲の一般人も俺達がガードに所属しているとはわからないだろう。
先輩は上は白のカッターシャツに、下もいたって普通の黒い長ズボン。
ただ、肩に背負った青いナップサックと、腰につけたポーチに入ってるものは恐らく危険物。
上井との戦闘を想定して準備をしてきたのだろう。
まぁ人の事も言えないか。
俺も腰にポーチをつけており、中身は拳銃と手錠。
手錠の方は、はめている間は特殊な電波を発生させ、能力者の能力を無効化する効果のある優れ物。
だが、俺たちが今暮らしているこの第一都市。
その周囲を隙間無く囲んでいる隔壁にも使われている素材、いわば俺たちを閉じ込めている檻と同じ物なので、なんともいえない気分になるが仕方ない。
そんなことを考えているうちに目的地、赤瀬ドームの前に到着する。
「うわ……」
到着と同時にドームを見て驚く。
立ち入り禁止のテープが張られている入り口付近には所々爆発の跡があり、ドームの天井にも大きな穴が数ヶ所開いている。
……外から見てこの様子だと、中はもっと酷いだろうな。
「ほら、行くぞ。
大きな音は立てるなよ?」
「あ、はい」
鞍馬先輩が先導し、俺も続いてドーム内に入る。
予想通り、中は酷かった。
薄暗い通路の天井には穴が開き、所々壁は崩れ、焼け焦げている。
演奏会や演劇に使われていたらしいが、今の状態ではとても使えたもんじゃないな。
「……煉」
不意に前を歩く先輩に小声で呼び止められた。
「……なんですか?」
同じように小声で返事をすると、五メートル程前の左側にある扉を指差した。
ただし扉は完全に吹き飛んでおり、中が丸見えの状態だ。
音を立てないように慎重に入り口に近づき、先輩が中を覗く。
「……メインホールだ。
入り口から約五十メートル……正面のステージの所に二人いる。
……金髪の方が上井だな。
もう一人は女の子のようだが……何を話している?」
先輩の言葉からしか判断できないが、やはり誰かと会うためだったのか……。
「……誰だ?」
「っ……!?」
背後から聞こえた、低い男の声。
マズイ……他にも仲間がいたのか……!!
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