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……まずはなんとかしてあの男に近づかないと何も始まらない。
一応俺の右手には拳銃があるが、あの能力と遠距離勝負をするのは得策では無いと思う。
……どうにか隙を突いて近づきゼロ距離で、なおかつ最大出力、最大範囲。
《キープ・アウト》の『内から外に押し出す力』による攻撃で意識を奪う。
これがベスト。
だがあいつの言う通り、第二能力がわからなければ迂闊に近寄るわけにもいかない。
それに第二能力を使わなくとも、もしあのスピードの金属矢をまともにくらえば致命傷は免れない。
まずは……回避に専念する。
一、二本だけならばあの男の手の向きからある程度の軌道の先読みはできるはずだ。
「……休む暇は無いぞ!!」
男の怒鳴り声。
「……なっ!?」
男の手元を見て、すぐにホール端、壁沿いに走り出す。
男の両手、全ての指の間に金属矢が一本ずつ。
計八本。
ふざけるな。
あの本数に狙い撃ちなんかされたらたまったもんじゃない……!!
すぐに方向転換。
ホールの中央に向けて、座席の間を駆ける。
それを見て男は鼻で笑うと、その動きに合わせて俺を狙い始めた。
今だ。
《キープ・アウト》発動。
範囲は半径三メートル、半球状。
出力最大。
対象は『座席』
……吹き飛べ。
「ほぉ……」
男の口から声が漏れる。
男が立っているホールの入口方向に向かって三つ、座席が飛んでいく。
座席を飛ばした狙いはブラインドを兼ねた、遠距離攻撃。
当たれば良し、当たらなくとも座席を避けた男を、拳銃で狙い撃つ……!!
「これでお前を狙えなくするつもりだろうが……」
上半身は飛ばした座席に遮られて姿は見えないが、男が喋りだす。
「つまらん策だ」
……まさか。
拳銃を構えるのを止め、とっさに左に飛び、倒れこむ。
刹那。
撃ち出された何本もの金属矢が座席を撃ち抜き、押し返し、貫通し、さっきまで俺がいた場所を通り過ぎていった。
「……ヤバイな」
つい口から言葉が漏れる。
隙が無い。
あの男に……近づけない。
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