『追跡、接触』

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金属矢が弾かれた事にお互い驚くが、俺の方は止まっている場合ではないので素早く立ち上がる。 「チッ!! 二枚目か……!!」 男が舌打ちをし、両手をコートのポケットに入れる。 ……あいつの矢は二枚目の壁は通過できなかった。 何故だ? 一枚目の壁、先程吹き飛ばした座席。 どちらも簡単に貫通していたのに……? 『二枚目か……!!』 それに、あの男のセリフ……。 ……試してみるか。 男に向かって全力で駆け出す。 しかし残り距離五メートルの所で、男がポケットから金属矢を取り出した。 数は右手に三本、左手に二本。 両手首だけを曲げて俺に素早く矢を向ける。 だが、俺も同時に《キープ・アウト》を発動。 設定は先程と同じ。 位置は俺と男の中間地点、前方二メートルの位置に壁を創る。 そしてさらに創り出した壁の十センチ前に、同じ大きさの二枚目の壁。 二枚目は強度は全くと言っていいほど無いが、身体に負荷もほとんどかからない、厚さ数ミリの壁。 「自分から向かってくるとは良い度胸だ、小僧!!」 男が叫び、五本全ての矢を高速で撃ち出す。 しかし 「……なっ!?」 それらは全て、俺が創り出した壁に弾かれる。 ……予想通り。 こいつの能力が『物を撃ち出す』能力。 第二能力が『物体を貫通させる』能力。 そして貫通できるのは……最初に当たった物だけ。 「くそっ……!!」 俺と男の距離はもう二メートルも無い。 焦った男がポケットに急いで手を突っ込もうとする。 させるかっ……!! 「ここまで……だっ!!」 駆ける勢いはそのままに、右手を握りしめて引き絞る。 そして右足を踏み込み、男の腹部を右拳でおもいっきり殴り付ける。 腹部に打撃を受けた男の身体がくの字に折れる。 だが、まだだ。 すぐさま《キープ・アウト》を発動。 範囲は俺の身体を中心とした半径一メートルの球状に、さらに出力は全力で。 半球状なら目の前の対象はやや斜め上に押し出される形になるが、球状ならば横に立っている男は真横に吹き飛ばされる。 吹き飛ばされた男は背中を通路の壁に打ちつけると、最後に呻き声をあげて前のめりに倒れこんだ。 意識は……さすがに無いよな? なんとか勝てた、か……。 ────
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