『追跡、接触』

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座席を押し潰しながら大蛇はゆっくりと這いずり、こちらに向かって動き出す。 これだけの体積の物を速く動かすのは上井にも辛いのだろうか、大蛇のスピードはさほど速くは無い。 だが大きさが大きさだ。 こんなに広いメインホールでも、約八メートルの巨体からしてみれば、たいした広さじゃないだろう。 動きまわられてはこちらが不利になる……。 その前に、壊す。 ……破壊は迅速に、かつ確実に!! 手榴弾を二つ取り出し、ピンを抜く。 一つは大蛇の進行方向に、もう一つは頭部の左横に放り投げる。 その蛇の緩慢な動きでは避けられないはず……!! 「甘ぇぜ、鞍馬!!」 「何が……っ!?」 とっさに横に一歩、サイドステップで飛び退く。 直後、弾丸の如きスピードで飛来した大蛇の頭部が俺の左側、すぐ横を通り過ぎた。 そして大蛇の頭部は後方の壁に衝突し、そのまま突き破る。 こいつ……大蛇の頭のやや下辺りを自分で爆発させて、その勢いで頭部だけを高速で飛ばしてきやがった……。 反応が間に合ってよかった……当たれば間違いなく行動不能。 悪けりゃ即あの世行きだ……!! 「全く……ガードの情報部ってのは全員そんないい動きすんのか? 今まで戦った奴の中には反応すらできなかった奴もいたぜ?」 「……たしかに情報部は基本的に実行部のペアを補助する役割だから、さほど戦闘が得意なわけじゃ無いさ。 まぁ俺の場合は能力柄、頻繁に現場に出るから鍛えられてんだよ。 勘や反応速度とかがな……」 ……中距離、遠距離は上井が得意とする距離、か。 だが遠距離がダメなら、懐に入り込めばいい。 方法はある。 ……このポーチの中の煙幕弾と、手錠を使えばな。
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