『追跡、接触』

15/16
前へ
/600ページ
次へ
──── ……先輩が煙幕の中に入ってから約三十秒が経った。 俺も先輩を援護するべきだったかもしれない。 だが《キープ・アウト》を短時間に使用しすぎたせいだろうか、身体にだいぶガタが来ている。 後ろで気を失っている男を監視していた方がいい。 今の俺では足手まといだ。 そして、本部への連絡もしておいたから後は先輩に任せておけばいい。 そう考えていたが……。 「……鞍馬先輩?」 先程から煙幕の中で動きが無い。 何が起きている……? ……煙幕が次第に晴れ、中の様子が見えてきた。 ……え? 立ったまま動かない上井。 意識はあるようだが、身体中から血を流しながら床に座り込んでいる先輩。 先輩……!? ステージに向かって走り出す。 足が重く感じるが、そんな事を気にしてはいられない状況になった。 ……正面のステージの上に誰かが立っている。 ステージに近づくにつれ、段々と容姿が確認できるようになる。 ……サラサラの黒髪の長さは腰の上辺りまであり、白いワンピースを着ている少女。 肌は白く、顔にはまだどこか幼さが残っているため中学生ぐらいに見える。 ……さっきまでいなかったぞ? 誰だ、あの子は? 「……そこのアナタも。 ちょっと待ってくれない?」 「……?」 こちらを向いた女の子の言葉を聞き、俺は足を止める。 敵意は無いのか……? 俺が立ち止まったのを確認すると女の子はフッ、と微笑んだ。 「……一体何の用だよ? 何でお前がここに……」 上井が女の子を睨み付けながら問いかけ、逆に女の子はゆっくりと上井に顔を向ける。 ……まさかあの子も上井の仲間なのか? 「何で、って聞かれたら……。 うん……警告かな?」 「……警告だと? おいおい……ちょっと待てよ。 俺達は与えられた仕事さえすれば、後は自由にしていいんだろうがよ!?」 上井が怒鳴るが、女の子は顔色一つ変えない。 「……たしかにそう言った。 でも──」 そこで一度言葉を切り、続ける。 「──多少なら組織の事が知られるのは別にいいんだけど、あまり勝手に暴れられると困るの。 ……あなた、自分が好き勝手に行動し過ぎてるのわかってる?」 「あ? そんなもん、俺の……」 「……報酬、無くなってもいいの?」 「……っ!!」 女の子の言葉に、上井の顔がひきつる。 ……報酬?
/600ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4847人が本棚に入れています
本棚に追加