『追跡、接触』

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「……報酬……ね。 詳しく聞かせてもらおうか……?」 「先輩!?」 鞍馬先輩……その状態で立ち上がったら……!! 「あ……あなたは動かない方がいいと思う。 ……死んじゃうよ?」 「ぐっ……!!」 先輩が口から血を吐き出す。 あれだけの深手を負っているんだ。 これ以上は先輩の命に関わる。 そんな先輩を見て、女の子が口を開く。 「まぁ、一言で言えば……その人にとっての夢、かな?」 ……夢? まさか、望んだものが何でも手に入るとでも? ……馬鹿馬鹿しい。 「あ、ちなみに今回は上井と風斬、この二人を連れて帰りたいだけなんだけど……見逃してくれないかな?」 風斬……おそらくさっき俺が倒した男の事だろう。 ……この状況、どうするべきか……? 「動くな……!!」 その時だった。 先輩が拳銃を取り出し、銃口を少女に向ける。 「君みたいな子供を傷つけるのは……少し気がひけるが……な。 ここで逃すわけには……いかない!!」 「……そう。 それはとても……」 少女がぼそりと呟く。 「残念」 瞬きをした間に、少女がステージ上から消える。 「……ごめんなさい」 「なっ!?」 そしていつの間に移動したのか、先輩の目の前に立っている女の子が、先輩の腹部に右足で蹴りを放つ。 だが先輩との体格差からすると大したダメージはない……はず。 「が、はっ……!!」 「……大人しく見逃してくれれば良かったのに……」 銃が床に落ち、続けて鞍馬先輩がその場に崩れ落ちる。 何の能力だ、あの子……? 「……ちょっと聞きたいんだけど、いいかな?」 少女が俺の方を向く。 「……何だ?」 「ガードの本部にはもう連絡したの?」 「……ああ。 直に増援が来るぞ?」 なぜ、そんな事を……? 俺の返事を聞いた女の子は、何故か安心したように微笑んだ。 「そう……よかった。 こっちの人も今ならまだ、治療すれば助かると思う。 私、人を殺すの嫌だから……」 ……良いヤツなのか悪いヤツなのか、どっちだよ。 「それじゃあ……おやすみなさい」 「……え?」 直後、目の前に現れた女の子の蹴りが俺の腹に向けて放たれる。 その華奢な脚からは想像できない、腹筋ごと貫かれたかのような衝撃。 何……が……? ────
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