『最凶の男』

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俺の周囲にいきなり現れた何本もの鎖が、ジャラジャラと音を立てながら俺の身体を縛る。 胸辺りから太股辺りまでを、ぐるぐる巻きに。 ギッチリと、隙間無く。 これじゃ、回避どころか身動き一つとれない。 「この《グラビティ・ボム》ってさァ……これ自体が『重力場』であり、『命中させた対象に重力負荷をかける事もできる』わけよ」 「……?」 櫂度の声に目を向ければ、その手にはバレーボール大の黒い球体。 まず感じたのは、違和感。 さっきまで俺が見ていた《グラビティ・ボム》は、たしかに色は黒いが半透明だった。 だが、それに対して今櫂度が持っている球体。 向こう側が見えないぐらいの……まるで絵の具で塗りつぶしたような、『黒』。 「あ、でもこれ……たしかに《グラビティ・ボム》を基盤にはしてるけど、完全に別モノなんだよ。 フル発動の《グラビティ・ボム》をこのサイズに押し留めたものに対して『力の向きを変更する能力』をかけて、球体の中心に向かって重力負荷がかかるように設定してるんだよなァ……。 ま、簡単に言えば、だな……」 ……アレが何か、なんとなく読めた。 《キープ・アウト》を俺自身を中心に、そして球状に全力発動。 『鎖』を指定、俺を縛る鎖を引きちぎるために、能力の出力を上げて外に押し出す力を徐々に強くしていく。 もっと、早く。 早くしないと……。 「超小型の、擬似的な『ブラックホール』だ。 潔く呑まれて、ミジンコサイズになるまで潰れちまいな。 ……ヒャハハハハッ!!」 『アレ』が、来る。
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