『最凶の男』

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「……っ!!」 櫂度の手に握られていた小さな『ブラックホール』が俺に向けて投げられたのと、俺の身体を縛る鎖が《キープ・アウト》の押し出す力に耐えきれずにちぎれたのは、ほぼ同時だった。 地面に右手をつき、その反動を使って左に飛び退いて回避する。 ……まだ身体は動くし、能力も使える。 動けるなら……足掻いてやる。 諦めて、たまるか。 「惜しいな」 「……は?」 俺の『目の前』で、櫂度がポツリと呟く。 とっておきの一撃が当たらなかった事への、不満か。 違う、そんな事はどうでもいい。 何で、『目の前』にお前が……? 『宣言』は、聞こえなかったはず……。 「ぐ……あ、っ……」 「ホント、惜しかったな。 効果はかなり落ちるけどよォ……《オリジナルイミテーション》を使わなければ、宣言無しで能力発動できるんだよなァ。 精々十メートル前後のあの距離なら、劣化した《ホッパー》でもギリギリいける」 櫂度に左手一本で首を締め上げられ、そのまま俺の身体が上へと持ち上げられる。 この馬鹿力……身体能力の強化、か……? やば……息、が……。 「まァ……雑魚のわりには、中々楽しませてくれた方かもなァ」 俺の首を締め上げている手とは逆の、櫂度の右手首から先がナイフのような形状に変化。 そして、黒く染まる。 それは、たしか……。 「トドメの《スライサー》と《デッドリィダーツ》だ。 じゃ、お疲れ……さん!!」 く……そ……。
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