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「う、わっ」
不意に、後ろでやや裏返った声がした。
それに続くように、何か重たいものが地面に落ちる音。
それを聞いて振り返ってみれば、私の後ろで銀髪の青年が地面に尻餅をついていた。
白いローブを身に纏った、大人しそうな子供だ。
「ふぇ……?
あ……ゼニス……だよね?
なんか、雰囲気変わった?」
「あ……アルテミス?」
その青年の声で目を覚ましたアルテミスが、落ちてきた青年……ゼニスへと話しかける。
ゼニス……この青年が、宝条の最高傑作か。
完成形を見るのは、私も初めてだ。
「えへへ……おはよう、ゼニス」
「おはよう、アルテミス」
……何だか微笑ましい光景を、邪魔するようで悪いが……。
「君が、ゼニスか。
宝条宗厳はどうした?」
「……貴女は、誰ですか?」
やや私を警戒しながら、ゼニスは聞き返してきた。
……『この場所にゼニスが送られてきた』、それだけですでに答えは出ているようなものだが……一応確認はすべきだろう。
「私は一条雫……宝条宗厳の知り合いだ。
ガードとドリームの戦いは、どうなった?」
私の質問に、ゼニスは迷っているような表情を見せた。
言いづらい事なのか、それとも想定外の出来事が起きたせいで、状況を把握出来ていないのか……。
「宝条が『勝った』のか、『負けた』のか。
……『結果』が、わかるか?」
「父さんは多分……負けました。
負ける瞬間を見る前に、僕はここに飛ばされましたけど」
……成程。
ならば、『宝条が敗れた場合』のプランで行くとしよう。
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