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「で、どうしたの?」
リリアのティーカップから立っていた湯気が消え、そろそろお代わりでも注いでやろうかとゴーストが思った時だった。
リリアが今度こそ何の用事でゴーストがやってきたのか問い掛けてきた。
「お前に話がある。正確にはお前に話を訊くって感じだが………長くなるかもしれない。もう一杯紅茶を注いでやるよ」
「あら、ありがと」
「んじゃ、話すぞ……」
ゴーストはもう一杯リリアに紅茶を注いでから、間を計って喋りだした。
「何も言わずこんな所に連れてきて悪かったな、リリア。実は竜華にお前の事を頼まれてたんだ」
「竜華ちゃんに頼まれていた?」
リリアは今初めて聞いたといった顔をしたが、すぐに思案顔になり、納得したように頷いた。
ゴーストにはリリアのその内なる思考が分からない。
だからこそリリアのその内なる思いを聞き出さないといけない。
ゴーストはそう考えて今ここにいた。
「ああ。どういう訳か魔王城からお前を連れ出して逃げろと言ってきた。それがリリアの為だと言わんばかりに竜華の目は訴えていた。
だから俺はお前をこんな魔界の辺境まで連れてきた」
「竜華ちゃん……」
竜華の名前を聞いてあからさまに様子が変わるリリア。
それを見て、ゴーストはやっぱり何か抱えているなと思った。
ここに来る間にも、リリアは気を抜くといつも眉を潜めて考え込んでいた。
そんなリリアの元気のない姿を何回も目撃すれば、いくら鈍くろうが誰だって様子がおかしい事に気がつくだろう。
あとは話を進めるだけだ。
「これで俺が隠していた事は話した。次はリリアの番だぜ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。私は何を話せばいいのよ……?」
「お前が考えている……抱えている思い全てだ」
「何であんたにそんな事分かるのよ!?」
リリアは驚いたように問い掛けるが、ゴーストはやっぱり自覚がなかったのかと呆れて溜め息を吐き出した。
「これでもお前の事はいつも見てきたんだ。それ位分かる」
「……っぅ!?」
そんなのよく注目してないと分からないと思うけどと、嬉しいような恥ずかしいようなで顔を真っ赤にするリリアだった。
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