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「……え?」
ゴーストのシンプルな解答。
リリアにとってはそれが意外で、とっさに反応を返せなかった。
「何か悪い事したのかお前は?龍神から竜華を守った。ただそれだけだろう?友達を助けたのが悪いのか?」
体罰に近いことを実の兄から受けていた竜華。
泣いている彼女を見て、リリアは自分と同じだと思った。
自分と同じでいつも泣いている竜華を見て、リリアの心が動いたのだ。
初めて自分以外の他人の存在を認識する事が出来た瞬間──
「龍神と竜華の関係が壊れたのは俺が聞いて思うに、ただの結果だ。その事で誰かお前を責めたのか?竜華は責め立てたのか?」
「竜華ちゃんは……」
──竜華ちゃんは少しも責めたりしなかった。
それどころか。
『やっとリリアちゃん私と話してくれたね。これで友達になれるね』
そう言って笑ってくれた。抱き締めてくれた。
責めるどころか竜華ちゃんは──
「……竜華ちゃんは責めたりなんかしなかったわ……私と話せて嬉しいって……友達になれるって笑ってて……」
「ならそれが竜華の答えだ。兄妹関係の事で竜華はお前を恨んじゃいねぇよ。寧ろいつもお前を思っていたんだ」
「…そっ、そんな事分かってるわよっ!馬鹿にしないで頂戴!」
竜華がいつもリリアの為を思っていた事は、他人同様のゴーストにさえ、はっきりと分かった。
リリアは言われるまでもなくその事を分かっている筈だ。
なのにさっきまで何故あんなにも不安な顔をしていたのか。
一人で考え込んで塞ぎ込んでしまっていたのか。
龍神を倒してしまい狂わせてしまった自分は正しいのか。自分の行動は正しいのか。
それを誰かに肯定してもらえて自信を持てたのか。
理由は分からないがともかく、いくらかマシな表情になったリリアを見て、ゴーストは表情を和らげた。
「悩み事は一つ減ったか?」
「悩んでなんかないわよ!」
「嘘つけ、強がんな」
「あぅっ!」
何だか偉そうなゴーストに腹が立って、リリアは反抗してみるがゴーストにはまるで全てお見通しのようで軽く頭をチョップで叩かれる。
文句を言おうと顔を上げゴーストを睨もうとしたが、ゴーストに頭を抑えつけられて顔をあげれなかった。
更に、
「全部話せって言っただろう?」
「~~ッ!?」
そこでゴーストに頭を撫でられて、リリアは何も反抗できなくなる。
完全にゴーストに手玉を取られていた。
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