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紅茶を注ぎ直して、それを飲んで2人は落ち着く。
最初からこうすれば良かったと、ゴーストは今更ながらに思う。
それが全く無駄な時間とは思わなかったが。
「話を続けるか」
「むー…」
リリアがカップから口を離し、流し目でこちらを見る。
「何だよその目は?」
不服な態度だったが、ゴーストは気にせず質問を再開する。
リリアの為なのだから、少しは我慢して貰いたい。
リリアとしてはまだ頭を撫でられた事を引き摺っていたのだが、ゴーストは彼女の僅かな頬の紅色に気がつかなかった。
「──竜華に対してお前の気持ちはどうだ?お前はどうしたいんだ?」
「竜華ちゃんに対する私の気持ち……?」
「難しく考えるなよ。難しく考え込むから余計に思考が雁字搦めになるんだ」
「うん……」
先程ゴーストに示されたシンプルな解答。
確かに自分はあれこれ色々考えてしまって、本当に大切な気持ちを見失っていた。
竜華ちゃんに迷惑をかけない為にこうしなければならないと理由を考えて、自分で気持ちを塞いでしまっていた。
視野が狭まって、幾ら考えても答えが出なかった。
「迷って焦って、そこで必ず踏みとどまって考えなきゃならなきゃいけないなんて事はない。迷ったら戻ればいい。初心に返れ」
「初心……私が竜華ちゃんに何をしたいのか……」
そんな事は分かり切っている。
「──竜華ちゃんを助けたい。今度は私が竜華ちゃんを助けるッ!!」
「……いい目になったじゃねぇか。その調子で早くいつものリリアに戻れ」
最後の台詞は軽口で言ったのだが、リリアの目がそこで底光りする。
「いつもの私?へぇ、ゴーストってばいつも私の事みてるストーカーなの?やだぁ!」
「早く戻れっつったがそこまで早く調子を取り戻されると困惑するんだがッ!?」
「ゴーストは混乱している。わけがわからず自分を攻撃した」
「しねぇよッ!?」
早速調子を取り戻してきたリリアを見て、突っ込みながらもゴーストはほっと安堵していた。
リリアが迷いを吹っ切る事が出来たなら、ゴーストの役目は殆ど終わったと言ってもいい。
だからリリアはもう──この幽霊の山にいる必要はない。
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