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「──じゃあ今日はもう寝ろよ。明日出発する」
ゴーストの言葉に目を見張るリリア。
「出発するって……アンタも付いてくる気なの?」
「ああ、そうだが?」
「アンタは関係ないじゃないのよ」
「………」
この言葉を聞く限り、リリアは1人で竜華を助けにいくつもりだったのだろう。
ゴーストがついていこうとするとは全く思わなかったようだ。
「関係無いなんてことはない。俺はお前が……お前が」
「何?」
すんでのところで、ゴーストの喉はその先の言葉を飲み込む。
いくら決意したからといって、リリア1人で竜華のところまで行かせるのがゴーストは心配だった。
だがゴーストの性格ではそんな言葉口が裂けても素直に言える筈がない。
「そう──執事だからな」
思い付いたこの都合がいい一言でリリアの説得を試みた。
リリアはゴーストのその一言に眉を寄せた。
元々執事をつけるようにリリアに入れ知恵したのは竜華。
リリアを遠くに逃がすように言ったのも竜華。
竜華としては本当は、ゴーストとと共に逃げて欲しかったのかもしれない。
けれども私は竜華を助ける事を選んだ。
そんな時私が1人で助けに来ようとする事を竜華は見抜いていたのかもしれない。
私が竜華を助けないと。『私だけで』竜華を助けないと、と。
それを防ぐ為のゴースト。
竜華にはきっと、1人で行こうとするリリアをゴーストが心配して、ついて来ようとした事も想定できたのだ。
そこでゴーストが今言った『執事』という存在。
(……ま。あの竜華ちゃんがそこまで考えていたとは本気では思えないんだけどね)
長い付き合いのリリアには、竜華は決して知能でいえば馬鹿ではないが、知識で言えばあまり頭がいい方とはいえない事を知っている。
実際、本当のところはどうかは分からないのだが。
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