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「………私が我が儘言って1人で行くって言ったら?」
「それでも消費できる我が儘は一つだ。……俺はお前についていくぜ」
リリアの抵抗を虚しく感じるゴースト。
そしてだんだん、そんなに俺は邪魔なのだろうか、とゴーストは落ち込みそうになった。
「……どうして……?」
「あん?」
聞こえるか聞こえないかくらいの、か細い声でリリアが何かを言ったのが聞こえた。
聞き取ることが出来ず、ゴーストは聞き返す。
「どうして?」
今度は聞き取れたが、それだけじゃ意味が分からない。
ゴーストはその先の言葉を待って、じっとリリアを見つめる。
──リリアがその目から涙を流した。
「っ!?」
ゴーストはそれを見てたじろいでしまう。
泣いているリリアは、いつもの傍若無人な彼女とのギャップで、極端に弱々しく映り、ゴーストを混乱させやすかった。
だが、ゴーストはそこでたじろいでしまった自分に喝を入れ、気合いを入れ直す。
リリアが泣く度に思い知らされる。
リリアは魔女みたいな性格をしているが、本当は弱い人間の女なのだと。
(気に入らねぇけど…………俺が守ってやらないとな)
リリアがここまで弱っているのに、もう自分のプライドなど気にする事など出来ない。
彼女にちゃんと伝わるように、思ってるだけじゃなくて。
ゴーストはちゃんと自分の気持ちを口に出していく事を決めた。
「泣くなリリア。そんなんだから心配なんだよ」
リリアの肩に左手を置き、右手に―少女の紅茶遊戯―を取り出した。
これは魔具として使わなければ普通のハンカチと同じだ。
ゴーストはそれでリリアの涙を拭った。
「……っ……どうして……何で分かってくれないの……?」
だがリリアにゴーストの言葉は届かなかった。
拭っても拭ってもリリアの涙は収まらなかった。
心配。
この程度の気持ちではリリアを説得する事は出来ないのか、とゴーストは眉に皺を寄せた。
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