The Ghost disliked the Full moon.

10/23
前へ
/204ページ
次へ
「………私が我が儘言って1人で行くって言ったら?」 「それでも消費できる我が儘は一つだ。……俺はお前についていくぜ」 リリアの抵抗を虚しく感じるゴースト。 そしてだんだん、そんなに俺は邪魔なのだろうか、とゴーストは落ち込みそうになった。 「……どうして……?」 「あん?」 聞こえるか聞こえないかくらいの、か細い声でリリアが何かを言ったのが聞こえた。 聞き取ることが出来ず、ゴーストは聞き返す。 「どうして?」 今度は聞き取れたが、それだけじゃ意味が分からない。 ゴーストはその先の言葉を待って、じっとリリアを見つめる。 ──リリアがその目から涙を流した。 「っ!?」 ゴーストはそれを見てたじろいでしまう。 泣いているリリアは、いつもの傍若無人な彼女とのギャップで、極端に弱々しく映り、ゴーストを混乱させやすかった。 だが、ゴーストはそこでたじろいでしまった自分に喝を入れ、気合いを入れ直す。 リリアが泣く度に思い知らされる。 リリアは魔女みたいな性格をしているが、本当は弱い人間の女なのだと。 (気に入らねぇけど…………俺が守ってやらないとな) リリアがここまで弱っているのに、もう自分のプライドなど気にする事など出来ない。 彼女にちゃんと伝わるように、思ってるだけじゃなくて。 ゴーストはちゃんと自分の気持ちを口に出していく事を決めた。 「泣くなリリア。そんなんだから心配なんだよ」 リリアの肩に左手を置き、右手に―少女の紅茶遊戯―を取り出した。 これは魔具として使わなければ普通のハンカチと同じだ。 ゴーストはそれでリリアの涙を拭った。 「……っ……どうして……何で分かってくれないの……?」 だがリリアにゴーストの言葉は届かなかった。 拭っても拭ってもリリアの涙は収まらなかった。 心配。 この程度の気持ちではリリアを説得する事は出来ないのか、とゴーストは眉に皺を寄せた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5670人が本棚に入れています
本棚に追加