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「話せ、リリア」
「……え?」
ゴーストはリリアの肩に両手を乗せて、真っ直ぐに彼女を見る。
そんな風にされたらリリアも顔を上げてゴーストを見るしか無くなる。
ゴーストは辛そうに眉を寄せていた。
「話してくれリリア。俺は邪魔か?今頃になって執事を解任しようとしたり、―皇女の鎖―を外そうとしたり……訳が分からねぇんだよ、気に入らねぇ……!
俺は……お前にとって俺が、邪魔だとしか思えねぇ………」
「そんな事ない!!傍にいて欲しいっ!!……あっ…」
感情に任せて叫んだリリア。
すぐに自分が今勢いで何を言ったのか理解が及び、俯く。
俯いていてもゴーストから見ればその赤い顔が見えてしまう。
「あ~…」
ゴーストは、リリアの反応にどう返したらいいのか分からなくて、視線が宙をを泳ぐ。
「う~…」
リリアもリリアで恥ずかしくて顔を上げる事が出来なかった。
ゴーストは深呼吸して、もう一度リリアを見る。
リリアの肩に触れている感覚を確かめる。
言うべき事は分かっている。あとは言うだけ。簡単だ。
呼吸を整えて、ゴーストは言った。
「──リリア。俺と離れたくないってお前は言ってくれた。なのに、どうしてお前は自分の気持ちを否定して俺を置いていこうとするんだ?」
恥ずかしかったが、こうでも言わないと話が進まない。
腹をくくったゴーストにもう怖いものはなかった。
リリアと離れ離れになる以外。
「……ゴーストの為よ……」
「あ?俺の為だ?」
自分の為を思うなら、リリアに付いていく事を反対する事はない。
ゴーストは首を傾げるが、リリアの言葉には続きがあった。
「ゴーストには家族がいるじゃない。家族は一緒にいるもの。離れ離れは悲しいわ」
リリアがようやく絞り出したか細い声。
それでゴーストは何故リリアがゴーストを連れて行こうとしないのか理由が分かった。
「だからゴーストは連れて行けないの。分かって頂戴……」
リリアはそう言い捨てて、俯いた顔を上げなかった。
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