5670人が本棚に入れています
本棚に追加
リリアが懸念していたものを聞いてゴーストはいつもの口癖を呟く。
「気に入らねぇ……」
「え?」
自分の声に顔を上げたリリアに対して、ゴーストは次は目の前で大声で言い放った。
「気に入らねぇっつったんだよ!!」
「っ…!」
ゴーストの大声に驚いて、ビクッと肩を震わせたリリア。
聞き慣れたゴーストの口癖。なのに今日のその言葉はリリアが聞き慣れた言葉とはまるで違う風に受け取る。
「家族が離れ離れになるのは悲しい?ああそうかもな。でもそれで家族の絆が壊れるとでも思ってんのかテメーは?」
「……それは……そんなの……私にはわかんないわよッ!!」
リリアは声を張り上げてゴーストに反発する。
その際に、ゴーストの手を自分の肩から振り払って、その勢いのままリリアはゴーストにまくし立てた。
「だって私は……私にはあんたと違って家族はいなかった!
一番近くで見た家族は竜華ちゃん達……
でもその家族は壊れたっ!!私は……!」
リリアはその先の言葉が声にならず、泣きじゃくる。
嗚咽ばかりが出るばかりで、リリアはそれ以上反論を続ける事が出来なかった。
「──お前が憧れた絆は、そんなに柔じゃねぇ」
泣きじゃくるリリアの頭を自分の胸の中に抱き締めて、ゴーストは優しく彼女の頭を撫でる。
「……ッ!?」
リリアは驚いて振り解こうとしたが、ゴーストはそれを許さない。
さっきまでリリアの肩を掴んでいて、彼女が震えているのが分かったから。
紅茶では癒せない。
物では癒せないなら、人の温もりで震えを止めるしかない。
リリアは今まで自分一人で色々な事を抱え込んでいた。
ゴーストはそんなリリアに抱え込んでいた思いを喋らせた。
それを言葉を吐き出すのがどれだけ大変な思いだったか泣きじゃくるリリアを見れば想像に難くない。
そんなリリアが、ずっと抱え込んでいた気持ちをゴーストにぶつけてくれたのだ。
ゴーストはリリアを支えると決めた。
「頑張ったな」という思いを込めてリリアを抱き締めた。
紅茶では癒せない。
―少女の紅茶遊戯―の出番は終わりだ。
これからは執事として……いや、一人の男としてリリアを護っていく。
そんな思いが少しでもリリアに伝わるように、ゴーストはリリアを強く抱き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!