5670人が本棚に入れています
本棚に追加
急に抱きつかれ、驚いたリリアはゴーストを突き飛ばそうと抵抗する。
だが、ここまで接近されて体を封じられてしまっては何も出来ない。
いくらリリアがゴーストより強いからといってそれは所詮魔力や魔術といった見えないもの。
単純に男と女では身体の力が違う。
リリアはゴーストを振り解けなかった。
訳が分からず混乱して最初は抵抗していたが、やがてリリアはゴーストに身を任せ始める。
振り解くのを諦めた訳じゃない。
次第に自分の中が温かくなって、安心感を覚えたのをリリアは感じたのだ。
こんな風に抱き締められた経験がリリアは圧倒的に少ない。
自分がなぜこんな気持ちになっているのか、リリアには分からなかった。
でもそんな疑問などだんだんリリアの頭からは消えていって、最後には疑問も何もなくなる。
ただ暖かなゴーストの体温が伝わって、そして優しく自分の頭を撫でる手に目を閉じる。
そうしてると自分の内で心臓が鼓動する音が聞こえた。
平常時よりも随分と早鐘だが、その心音に心地よさを感じた。
「──本当の家族の絆はそんなに柔じゃねぇんだよ。
それは俺が証明した。
何年も家を空けたのに親父もお袋変わらねぇ。アルとエアは出来れば成長してほしかったが……結局は何も変わってなかった。
どんなに離れ離れに、すれ違ったりしたって、最後にはみんなで笑って飯を食って過ごせる。
リリア……お前が憧れた家族はそういうものだった筈だろう?
そうだよ。うちはそうだ。お前は間違っちゃいねぇよ」
ゴーストの言葉にリリアは直ぐには返事を返せなかった。
言葉が出なくて、ゴーストの胸で泣きながら頷いた。
「ひぐっ……ごーすと……じゃあ、竜華ちゃんは……?竜華ちゃんはお兄ちゃんを止める為にって……!!」
本当の家族。
それを知ったリリアはゴーストの言葉を竜華に当てはめてみて、疑問が浮かぶ。
竜華は龍神と戦い、永遠に仲違いしたままなのだろうか。
もう竜華と龍神は家族ではなくなってしまったのか。
そんなの……そんなの……!!
「それが嫌ならお前が何とかしろ」
──ゴーストは自分の考えなど全てお見通しだといったようにそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!