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「魔女じゃなくて人間だってば……魔女っ娘でも可……なんてね」
ゴーストが部屋から出ていって、リリアは1人そう呟く。
その顔は嬉しそうで、とても幸せそうな、見ているだけでこっちも笑顔になる……そんな子供のような笑顔だった。
「私の事が心配、か……」
じゃあ何で心配なの?
「私の事を護る、か……」
どうしてそんな風に思えるの?
「………ふふっ」
愛情を受けずに育ち、愛に疎いリリアでも流石に、ゴーストが自分の事をどう思っているかは理解出来た。
そして先程抱き締められた時に感じたこの気持ちから自分がゴーストに何を感じているのかも──……
「出来れば『それ』を言って欲しかったな、ゴースト」
私は。
私からはとても恥ずかしくて………それ以上に怖くて言えないから──
「……都合がいいわね。気に入らないって言われても仕方無いかも」
リリアはテーブルの上に忘れ去られた魔具―少女の紅茶遊戯―を見つめる。
「こんな所に忘れていって……明日返さないとね」
正直恥ずかしくて恥ずかしくて、明日ゴーストの目の前に立てる自信がなかったリリアだが、その忘れ物の―少女の紅茶遊戯―に救われる。
「まさか、わざと忘れていったんじゃないでしょうね?」
ゴーストはそんな気遣い出来る訳ないし、そんなキザでもない。
普通に慌てて忘れていったのだとは分かっている。
こんなものは気持ちを落ち着かせるただの独り言だ。
「もう寝よう……」
心臓がドキドキしていて、とても眠れるような気はしなかったが、凄く疲れていた。
リリアは目を閉じる。
もう不安な事なんて考えない。
ドキドキがそれを吹き飛ばす。
……──何だかとてもいい夢を見た気がした。
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