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†
──そう。ここまでは幸せな夢だった。
「出発だ」
「……いくのか、ゴースト?」
「親父……お袋、お前ら……」
私はそこで思った。
「やっぱり、あなたを連れていく事は出来ないわ、ゴースト」
「あ?ちょっと待て!リリア!?」
「ごめんなさい、ゴースト」
「ふざけんなリリアッ!!気に入らねぇッ!!俺は……お前の事が……!!」
「ありがとうゴースト。さよなら」
魔術で幽霊の山全体を結界で覆い、その中の者を眠らせた。1ヶ月は起きない。
ゴーストが最後に言おうとした言葉。
それに後ろ髪を引かれつつも、私は竜華の元に──
「バカリリアッ!!何で戻って来たんだッ!!そのままゴーストと逃げれば良かっただろう!?」
「竜華ちゃんを助ける為よ!!今度は私が竜華ちゃんを救うのッ!!」
竜華ちゃんはたった1人で龍神と戦っていた。
力の差は圧倒的で、どうして今まで殺されていなかったのか不思議な程だった。
「──我は貴様が来るのを待っていたぞ……忌まわしき災厄!」
龍神はやはり変わり果てていた。
魔王と呼ぶに相応しい禍々しい魔力。
以前はここまでは狂っていなかった。
私が変えてしまったもの。私が正さないと──
「貴様は人間にしておくには惜しい魔力を持っている。我はその魔力を欲する……世界を秩序で満たすにはいくら力があっても足りぬのだ!
我は貴様の魔力を手に入れる為に愚妹を生かしていた」
「何を言って……」
「―アビス―」
「きゃあああああーーーっ!!!」
「竜華ちゃんーーーッ!!!」
「その動揺が我の支配の剣をお前に届かせる……!!」
「え……?あああああああッ!!?」
魔王の闇の魔力、―支配―が私の体を蝕んでいった。
私は抵抗した。
必死で抵抗した。
でも──
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