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「──何か言ったか?下等種が」
目の前には何もなかった。
ただ闇が広がっていて、絶対的な支配があった。
「下等種は大人しく食物連鎖の法に従っていればいい。
が……消してしまうには少々惜しいな。
貴様を我が手中に収めていればブロッサム・リーム・アマリリィも逆らえぬようだしな」
何も残らない。
何も届かなかった。
リリアの泣いている声がだんだん遠ざかっていく…………
(ああ……あいつ最後になんて言ったっけ?)
『私も、もうじき闇に墜ちる………本当の闇に……!最後の……最後のわがままよ……!!私の……私の娘の事を頼んだわよ……』
『娘』ってなんだよ?
一体誰の娘だよ?
ああ。私の娘って言ったな。リリアの子供か……
じゃあ誰が父親だよ……?
「まだ意識があるか……下等種にしては本当に対した奴だな」
闇に更に押しつぶされ、先程の疑問が消えた。
思考を消された。
(ああ……おれアイツに最後……なんて言ったっけ……?)
ゴーストは必死で思い出そうとする。
だが魔王が生み出す闇が、その思考を塗り潰していく。
自我が消える。
存在が消える。
想いが消え……かけた。
(ああ、そうだ。俺はリリアに……)
『俺はお前の事が嫌いだった!!でも今は……!!』
「──何か言ったか?下等種が」
(俺はリリアに結局……『好きだ』って言えなかったんだ……)
想いを伝えられなかった。
その前に消された。
──想いは消えた。
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