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「あんた、将来何をするつもりなの?」
母が唐突にそう聞いてきたのは、秋も終わりに近づいた、ある日曜日の夜だった。
その日は一段と空気が冷たくて、秋にも関わらずマフラーを首に巻かないと、外に出た途端に寒さが骨まで伝わってくるような、とても寒い日で、僕は1日中エアコンの前から離れなかった。
「なにさ、急に。」
柔らかい簡易ソファーに悠々と座り、狭いリビングに一台だけ置いてある小型のテレビで、他愛もないバラエティ番組を見ていた僕は、母の質問に少しばかり戸惑いながら、夕食に使った食器を洗い終えた母を振り向いた。
母は洗剤のついた手を丁寧に洗い、食器棚の隣にかけてあるタオルで手を拭いた後、爪の先に汚れが詰まっていないか見ながら、リビングに入ってきた。
「ほら、それよ、それ。」
母が指差した先は、リビングの隅に置いてある小さなタンスの上に開かれた、四つ折りのピンク色の紙だった。その紙の横には、僕が通っている、アホ揃いの男子校の名前が入った、茶色の封筒も一緒だ。
そして、そのピンク色の紙は、年5回に分けられた定期進級テストの、4回目のテストの赤点通知だった。
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