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彼女にかけ寄ろうとした僕だったが、何故だか体が上手く動かす事が出来なかった。
なんだか、ロボットにでもなったように体がギクシャクしていた。
しゃがんで彼女を助け起こそうとしたが、彼女の肩に少し触れた瞬間、思わず手を引いてしまった。
さっきまで柔らかそうな綺麗な肌をしていた少女の肩は、ひどくザラザラしていて、炭にでも触ったような感触だった。
肩だけだった黒い部分がどんどん広まっていく。
僕は、全身黒くなっていく彼女に無事を確かめるため話しかけようと、口を開きかけたが、彼女の表情を見て驚いた。
彼女は、まだ笑っていたのだ。
彼女の体が、完全に真っ黒になった時、僕は耐えられず口を開いた。
「君は、誰!!」
彼女は、その質問には答えなかった。
代わりに一際眩しい笑顔を僕に向けた。
彼女は、笑ったそのままの姿で動かなくなった。
もう、黒い、石だ。
周りには黄色で埋め尽された菜の花畑。
空には黄金に輝く太陽。
こんなに綺麗な場所なのに、僕の心は乾期のサバンナにでも放り出されたように乾いていた。
こんな世界なんて、消えちまえばいいのに。
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