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「ん、何だ?」
「乗せてくれる?」
窓越しに立っていたのは高校生くらいの少女で礼司は手を伸ばして助手席の窓を開けて話しかけた。
「どこに行きたいんだ?」
「首都高一周。いくらくらい?」
少女は笑顔で言った。
礼司は少し考えると、少女に向かって言った。
「1周5〇〇〇円でいいや。どうせ戻ってくるから、それと、プラス高速代な」
「本当?」
「いいよ。どうせ暇だから貸切で」
「もう11時よ。そろそろ忙しくなるでしょ」
「そうなんだけど、最近つまらなくてさ」
「大丈夫? 会社に怒られるよ」
「お前に言われたくねえよ」
「あはは、ごめんなさい。それでおじ様、どうするの? 乗せてくれるの?」
「いいよ、行ってやるよ」
礼司は運転席の右にあるレバーを引いて後ろのドアを開けた。
「ああ、前がいいなあ。車に酔うから」
「まってくれ」
礼司は釣り銭箱推しを片付けて助手席を開けた。
「前は狭いぞ、シートベルトつけろよ」
「はい」
少女は前に乗ると
「よろしくね」
とにっこり笑い挨拶をした。
今流行のメイド風の黒いミニワンピースと白いブラウスと白いハイソックスを着ていた。
「首都高一周でいいんだな」
少女はうなづきながら、金色に光る鬼の顔の形をしたノブをカバンから出した。
「はい、じゃあこのシフトノブつけてくれる」
「何だこれ?」
「何も聞かないで」
少女は真剣な目つきで礼司の目を見つめ返した。
「ま、しょうがない」
少女の目つきに少々恐縮した礼司はハンドルの脇のコラムシフトのノブを回し、鬼をしたノブに取り替えた。
すると、一瞬車が光ったように礼司は感じた。
「ん? 何か変だな?」
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