第六章 走鬼

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「11時ジャストだよ」 魔美の言葉に礼司は鬼のノブをドアに付けて握ると『ニューコア』は白いもやに囲まれた。 「いるか?」 「いない」 「俺も感じない」 「じゃあ別なクラブに移動した?」 「ああ、たぶん。どこだ?」   2人は階段を駆け上り道路に出ると 「あっち」  魔美は左を指差した。 「円山町か」  礼司はリュックをおろしチャックを開け、中からインナーブレードを取り出した。 「魔美、滑れるのか?」 「うん、小さい頃パパと一緒に滑ったから」 「うん」 2人はインナーブレドを履き終えて立ち上がった。 「よし、行くぞ」 「OK」 「膝を曲げてな」   礼司の言葉で魔美はスタートしスペイン坂をかなりのスピードで下り、突き当たりを右に曲がった。 「おお、やるな」 「へへ」 魔美は礼司の手をしっかり握った。路地を抜け、東急デパートを左に曲がり坂を上がると、ホテルが立ち並ぶ間に数件の大きなライブハウスがあった。 滑りながら、「この辺りだよ」と魔美が言った。 「おお、俺も感じる。このビルだ」   礼司はインナーブレードを脱ぐとエレベーターのボタンを押した。 「何階だ?」 「4階か5階か6階」 「うん、あと30分か」  礼司は4階と5階と6階を押した。 「あー、魔美」 「何?」 「武器、武器がないぞ」
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