第一章 双鬼

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「大丈夫よ。きっと。ふふふ」 「じゃあ行くか、シートベルトしろよ」 「うん」  エンジンをかけると、キーンと言う音がした。 「ん」 と礼司が変な声を出したが、料金メーターの貸切ボタンを押してタクシーを走らせた。 「後ろを見て」 と少女に言われて礼司が車を止めて振り返ると、さっきまで乗っていたタクシーがあった。 「な、何だ! おい、どういう訳だ」 「あはは。あっちはね魂が抜けた車なの。夜野さん」 「何? それにどうして俺の名前知ってる」 「ここに書いてあるじゃない、私、魔美、よろしく」 「意味がわからないぞ」 「まあいいでしょ。お金払うから」 「金かあ」  魔美にせっつかれ、礼司は頭の中の整理がつかないまましぶしぶ車を走らせた。 自分達の姿やタクシーは他の人達にも認識されていた。 「おい、タクシーに魂なんてあるのか?」 「うん、運転しやすいでしょ」 「ああ、なんか思い通りっていうか」 タクシーは青山墓地を抜け、青山通りに出て右に曲がり、霞ヶ関のランプに向った。 礼司は前方を見ながら魔美を問いただした。 「さあ、説明してくれ」 「話せば長いけど、要するに鬼退治」 「鬼退治? どんなに長くても話を聞かせてくれ。それと高速代」 「うん」 礼司は魔美から受け取った高速料金700円を払うと、魔美に領収書を渡した。 「最近、首都高で事故が増えているでしょ」 「ああ、毎日人が死んでる、俺も通るのが怖いくらいだ」 「それが、ここ一週間の死亡事故は全部カップルだって知ってる?」 「そういえば、そうだな」 「あれは殺されたのよ」 「だ、誰に」 「鬼、双鬼という鬼」 「鬼だと? 訳がわからん事言って」
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