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「大丈夫よ。きっと。ふふふ」
「じゃあ行くか、シートベルトしろよ」
「うん」
エンジンをかけると、キーンと言う音がした。
「ん」
と礼司が変な声を出したが、料金メーターの貸切ボタンを押してタクシーを走らせた。
「後ろを見て」
と少女に言われて礼司が車を止めて振り返ると、さっきまで乗っていたタクシーがあった。
「な、何だ! おい、どういう訳だ」
「あはは。あっちはね魂が抜けた車なの。夜野さん」
「何? それにどうして俺の名前知ってる」
「ここに書いてあるじゃない、私、魔美、よろしく」
「意味がわからないぞ」
「まあいいでしょ。お金払うから」
「金かあ」
魔美にせっつかれ、礼司は頭の中の整理がつかないまましぶしぶ車を走らせた。
自分達の姿やタクシーは他の人達にも認識されていた。
「おい、タクシーに魂なんてあるのか?」
「うん、運転しやすいでしょ」
「ああ、なんか思い通りっていうか」
タクシーは青山墓地を抜け、青山通りに出て右に曲がり、霞ヶ関のランプに向った。
礼司は前方を見ながら魔美を問いただした。
「さあ、説明してくれ」
「話せば長いけど、要するに鬼退治」
「鬼退治? どんなに長くても話を聞かせてくれ。それと高速代」
「うん」
礼司は魔美から受け取った高速料金700円を払うと、魔美に領収書を渡した。
「最近、首都高で事故が増えているでしょ」
「ああ、毎日人が死んでる、俺も通るのが怖いくらいだ」
「それが、ここ一週間の死亡事故は全部カップルだって知ってる?」
「そういえば、そうだな」
「あれは殺されたのよ」
「だ、誰に」
「鬼、双鬼という鬼」
「鬼だと? 訳がわからん事言って」
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