第六章 走鬼

6/8
前へ
/101ページ
次へ
「あはは。ないよ」 「素手かい?」  エレベーターが4階で止まるとドアが開いた。 その先には黒い扉に「クラブ ロングラン」と書いてあった。 「ここじゃない」   礼司たちはエレベーターの扉を閉めた。 「次だな」 「うん」 エレベーターの扉が開くと、台風のような風が吹いてきた。 2人は身をすくめエレベーターから飛び出した。そして、クラブのステージに向かった。 「すげーこれが、走鬼か」 「うん、私たちの体に入ろうとしている」 「大丈夫か?」 「私は大丈夫だけど」 「俺もおかげさまで、強くなったみたいだ」 「うん」  魔美は笑った。 「でも、実態がないから素手でも戦えん」 「あれよ」 そう言って、魔美はステージに上がってギターを持った。 「なんだ、音楽か?」 礼司はステージの裏に回って電源を入れると、アンプがブーンと言う音をたて、スピーカーが低いうなりを上げていた。 「おい、やつのパワーが強くなってきたぞ」 「私、危なそう。苦しい」 「待っていろよ。今助けてやる」 礼司はアンプてボリュームをいっぱいに上げ、ギターをかかえてピックを持った。 「あっ、俺ギター弾けねー」 「もー」 「じゃあ、こっち」 魔美はキーボードのスイッチを入れた。 「おい、俺は『キラキラ星』しか弾けないぞ。もう一曲は『猫踏んじゃった』」 「私が弾くわ」 そう言ってキーボードを弾き始めた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1004人が本棚に入れています
本棚に追加