第六章 走鬼

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「おお、聞いた事がある」 「賛美歌112よ」 「『諸人こぞりて』か」 すると風がおさまり、入り口の近くに2メートルほどのうっすらと雪ダルマのような影が見えてきた。 「あれが走鬼か」 「うん」 「スタイル悪いなあ」 礼司はギターを持って、人差し指と中指と薬指で弦を押さえて弦をはじいた。そのジャーンという音で走鬼の影は濃くなった。 「弾けるじゃない」 「メジャーコードはな。マイナーコードが難しくてギターを止めた」 魔美の弾く曲に合わせて礼司は激しくピックを動かすと、走鬼の輪郭がさらにはっきりしてきた。 「もう少しだ」 「あと5分よ」   すると、後ろのドラムが鳴り出した。 「おい、だれだ?」 礼司が後ろを振り返ると 魔美が 「この前死んだ、「フームーン」のドラマー霊だわ」   次にベースが鳴り出した。「おお、シミケン、少し太ったか?」 次にギターが鳴り出した 「OCHA相変わらず派手な頭だなあ」 礼司はギターを弾くのを辞めると最後にトランペットが鳴り出した 「ふじかぁ、サンキュー」 4人はロックの『諸人こぞりて』演奏した。 そして音楽が変わりダルメシアンという曲になった 「おお、ナイルの曲だ」 すると、走鬼の姿がはっきりと現れ、 「おっし」と言って、礼司はギターを持って走り出した。 そして、ギターのネックを持って大上段に構え、ジャンプして上から叩き下ろすとギターは真っ黒な斧に変わった。 「手ごたえあり」 走鬼から白い液体が飛び散った。すると、『ニューコア』から4つの白い塊と、千駄ヶ谷の国立競技場から6つの白い塊が夜の空へ昇っていった。 「あのメンバー、音楽好きだったんだね」 「ああ、向こうの世界でもきっといいバンドになるさ。任務完了」 「あっ、時間だ」 魔美が言った。12時になった瞬間、周りにたくさんの若者が踊っていた。 「何だ? おやじとガキ」  タトゥーだらけの男が言った。 「帰るぞ。魔美」 「あはは、私は未成年だ」
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