第七章 吸鬼

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「やばいぞ、実ができてしまう」   炉の前で遺体と最後の別れをする時には、すでに口から3メートル以上の枝が出て銀杏くらいの濃いグリーンの実が出きていた。 それを見ていた礼司の目の前で実がパーンという音をたててはじけ、2人の親族と真奈の口に入った。 「ああ」 「ああ、遅かった」  魔美が後ろから言った。 「どうする? 魔美」 「大丈夫。今夜12時過ぎるまでは、種は芽を出さないわ」 「退治するにも、生きている人間の体に入ったやつをどうやってやるんだよ」 「『ミクロの決死圏』のようになって、彼女たちの胃に入る?」 「何で知っているんだよ、あの映画、お前の年齢で」 「ああ、パパが好きだったの」 「なるほどね。それより、どうやって退治するんだ?」 「彼女たちのお腹に向かって、波動を出して吸鬼を殺すの」 「うん、どうやって?」 「両手の平で触らずにボールを作るの。そして、叩く感じで気を出すの」 礼司は両手を出した。 「おお、何かわかる。ぽわぽわって感じ。距離は?」 「霊的なパワーには距離は関係ないから、何メートルでも平気だよ」 「じゃあ、仁君の棺桶に向かって波動を出してみるぞ」 礼司は魔美からもらったグローブをして両手合わせを花のように開いて前に突き出した。 手は白く輝き、真っ白な光の帯が数メートル先の棺桶に届くと、仁の体から出ていた木が青白く燃え出した。 「やった」 「うん」 周りにいた人たちはそれに気づかずに最後の別れを終え、棺桶に釘を打っていた。 「続いて彼女たちに波動を送るぞ」 「その格好って、普通の人から見ればただの変なおやじだね」 「ばか、こっちは真剣だ」  礼司は手と手との間を20センチくらい離し、そこに気をためて真奈のお腹に向けて発射した。普通の人では見えない白い光は、真奈のお腹で消えた。 「やはり、効果が無かったみたいだな」 「そうだね」 「鬼退治は11時からかい?」 「うん、まだ種の状態だから」
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