第一章 双鬼

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「首都高ができてからもう50年もたっていてるでしょ、そこで死んだ人がたくさんいて、その霊が、地縛霊となっていたるところにいるのよ」 「ほう、怖い話だ」 「信じてないでしょ」 「まあな」 タクシーは霞ヶ関料金所に入って首都高速に合流すると目の前は赤いテールランプが光り、渋滞していた。 「おお、夜間工事かい」 礼司が横を向くと口をとんがらせた魔美はだまって前方を見ていた。 沈黙が流れる時間に耐えられなくなった礼司は、魔美の機嫌をなだめるように言った。 「鬼がいたら、もっと騒ぎになっているだろう」 「見えればね。まあいいや。 ね、そのライトを一番下まで回して」 「うん、あれ? こんなのあったかな」 礼司はワイパーのレバーについているライトのダイヤルを回した。 すると道路の両車線の路側帯に数メートルおきに白い銅像のようなものが浮かび上がってきた。 それは一つ一つ人の顔をして動かなかった。 「何だ、コリャ」 「地縛霊よ」 「こんなにいるのか?」 「うん。交通事故は突然だから死んだ本人もわかっていないし、この世に未練がたっぷりあるの」 「こんなのがいったい、何人いるんだ」 「300体くらい」 「そんなに?」 「だって40年よ」 「そうか、成仏させりゃいいだろう」 「誰が信じる? 誰がやるの?」 「そういえば、さっき鬼退治と言ったのは?」 「ちょっとそこに停めて、大丈夫だから」 いつの間にか、周りの車はなく、神田橋の路側帯に礼司が車を停めても一台も車は来なかった。 「車が来ない……」 「心霊ライトを点けると車はこっちの世界に移動するの」 「ほほー、こっちとは?」 「鬼のいる世界よ」 魔美はカーナビの画面を指差しながら礼司に言った。 「ここの白いのがこの車ね」
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