第七章 吸鬼

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「外で鈴音が聞こえて嵐丸が鳴けば、必ず窓を開ける」 「あはは」 魔美は嵐丸を抱いて車から降り、礼司は嵐丸を仁の家の庭に離した。 「嵐丸、鳴け」 礼司は念を送ると嵐丸は、庭からリビングに向かって大声で鳴きだした。 「あと1分」 「開くかな」 その時サッシがカラカラと開く音がした。 「11時だよ」 と魔美が言うと、礼司は鬼のノブを握った。すると、仁の家に白いモヤがかかり、回りの音が消えた。 「行くぞ」 「うん」 庭に入るとサッシが開いて、緑色の柿種くらいの大きさの物が80センチくらい宙に浮かんでいた。 「向こうの世界では、ここに本体があるんだな」  礼司は波動を送り 「フィニッシュ」 と言って、後ろを向いて指を鳴らした。 しかし、種に変化が無かった。 「だめなの?」 「うん」 「どうする?」 「あの時、仁は……。そうか」 礼司は突然、玄関に走りバケツに水を汲んで戻ってきて、その種に水をかけた。すると、その種から小さな芽が出た。 「こういうわけだ」と言って、礼司は、波動を手から送り出した。すると、その芽が青い炎上げて燃えた。 「さあ、行くぞ」 「うん」 「嵐丸は?」 「あはは、家の中の猫の餌食べている」 「いくぞ」 2人と嵐丸はタクシーに飛び乗り、鬼のノブを付けて走り出した。 「次はナイル、頼む」 「わん」とナイルは吠えた 「11時10分、予定通りだ。品川まで20分」 「そんなに早く行けるの?」 「だって、誰も走っていないから。あはは」
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