第七章 吸鬼

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「あれ? 右のほう」 「そうだ」  車をステーキ店の前に泊めると、ビルを見上げながら言った。 「魔美、ここの6階だ」 「うん。えっ、もう芽が出ているの?」 「たぶん」 6階のエレベーターが開くと、目の前の緑の種から芽が出ていた。 そして、足元にシャンパンの瓶が転がっていた。 「たぶんこれだ」 「シャンパンのアルコールに反応して、早く発芽したわけ?」 礼司は全身に力を込めて波動を木に送った。それは、真っ青大きな炎となって天井に届いた。 「11時59分58秒、任務終了」 「あはは、Good Job」 店のドアが閉じた瞬間、雑踏が戻ってきた。その瞬間、店から悲鳴が聞こえた。 「どうしたのかしら」 顔を隠している真奈がしゃがんでいた。 「ちょっと遅かったみたいだな。仁の恨みかな。大丈夫、治るさ」   ビルから出ると、魔美が礼司に言った。 「夜野さん、あと2ヶ所行かなきゃ」 「そうか」 「それと、いよいよだよ」 「何が?」 魔美は空を指差した。 「ん、何だ?」 「お月様」 礼司は首をかしげながらポケットからポチ袋を出して魔美に渡した。 「えー、ありがとう」 「ああ」 と言って、礼司は照れ笑いをしながら、運転席に乗り込んだ。 「さあ行くぞ!!」 2人を乗せたタクシーは、満月になりかけている赤い月を背に走り出した。
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