第八章 舞鬼

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第八章 舞鬼

【2月18日の朝4時】 辺りはまだ暗く、気温は5度。吐く息が白く、夜明けにはまだ遠い。 2台のカーキ色に染めた幌のついたトラックが、S駅のロータリーに着いた。 そこから覆面をした数人の男たちが降り、大きな黒い塊を台車に乗せてシャッターの前で止まり、 脇にあるボックスにキーを差し込み、赤色のボタンを押した。 すると、シャッターはガラガラと大きな音を立てて開き始め、普段より異常に早い時間にシャッターの開く音を聞いた駅員は、宿直用の服を着たまま驚いて走ってきた。 作業をしていたうちの2人の覆面をした男は駅員に向かって走り出し、ためらわずにサバイバルナイフで駅員の左胸を刺した。 血しぶきを逃れるように、2人の男は止まることなく階段を駆け上がって宿直室へ入り、 残りの男たちがその台車の荷物エレベーターで持って上がった頃、2人は宿直室から出てきた。 宿直室の中は私鉄と地下鉄の職員を含めて、血だらけになった8人の男が横たわっていた。 ホームには2台の電車が停まっており、仲間の一人がその電車の前から5両目の非常コックで扉を開けて黒い塊を車両に入れると、1人の男が運転席のドアを開き飛び乗った。 その男が無線で連絡をすると、ローターリー前に停まっていた2台トラックから次々に迷彩服に覆面とヘルメットをかぶった男たちが降りた。 手には、それぞれ木製グリップの自動小銃AK47を持ち、足早にホームへ向かい、一列に並んでドアの開くのを待った。 先頭車両の前に立った男が手を上げるとドアが開き、男たちは一斉に乗車した。
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